【2026年10月最新】労働時間法制の見直しガイド:勤務間インターバル・つながらない権利と裁量労働制
厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で、労働時間制度の見直しに向けた具体的な議論が進んでいます。10月14日の第212回では「勤務間インターバル制度」「つながらない権利」「労働時間の把握」、10月23日の第213回では「裁量労働制」が取り上げられました。いずれも報道でも大きく扱われているテーマです。
本記事では、議論の論点と、現時点で中小企業が準備しておきたいポイントを、厚生労働省の公表資料に基づいて解説します。なお、いずれも審議中の内容であり、法改正の内容や時期は決まっていません。
1. 改正の背景と企業への影響
今回の議論は、休息時間の確保などで働く人の健康を守る「規制強化」の方向と、裁量労働制の対象の見直しという「柔軟化」の方向が、同時に検討されている点が特徴です。裁量労働制については、令和8年7月21日に閣議決定された日本成長戦略で、現場の実態や労使双方の立場を踏まえて対象の在り方を見直す方針が示されました。
これらの見直しが今後どのように進むかは、現時点では確定していません。一方、労働時間の適正な把握は、既存の法令やガイドラインに基づき、従来から企業に求められている対応です。今後の制度見直しに備える意味でも、勤怠記録や休息時間の実態を今のうちに確認しておくことが重要です。
2. 主な論点
① 勤務間インターバル・つながらない権利・労働時間の把握(第212回)
勤務間インターバル制度は、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する仕組みで、現在は労働時間等設定改善法上の努力義務です。厚生労働省の就労条件総合調査では、導入企業の割合は令和7年で6.9%にとどまっています。分科会では「法的位置付け」を含め、実効性のある導入促進策が論点とされました。
「つながらない権利」は、勤務時間外の連絡への対応を巡るテーマです。日本では現時点で包括的な法的規定は設けられておらず、今回は制度の在り方を検討している段階です。なお、現行でも、時間外の連絡への対応が指示や実態によっては労働時間に当たる場合がある点には注意が必要です。資料では、各企業が実態に応じて業務上の連絡ルールを明確にすることをどう考えるかが論点とされています。また、労働時間の把握が全くできていない事業場があるとの指摘も示されました。
② 裁量労働制の対象の在り方(第213回)
裁量労働制は、令和6年4月の改正で本人同意の手続などが強化されたばかりです。資料では、拡充を求める意見(対象業務と対象外業務が混在する場合や、他社の事業運営に携わる場合への適用など)と、令和6年改正の適正運用の徹底を優先すべきとする慎重な意見の両方が示され、健康確保・長時間労働の防止・適切な処遇の確保といった濫用防止措置を前提に、対象の在り方をどう考えるかが問われています。労使の意見は大きく分かれており、今後の議論が注目されます。
3. 論点一覧
テーマ 現行制度 分科会での主な論点
勤務間インターバル 努力義務(導入企業6.9%) 法的位置付けを含む導入促進策
つながらない権利 包括的な法的規定なし 企業ごとの連絡ルールの明確化
労働時間の把握 労働時間の適正な把握に関するガイドライン、安衛法上の「労働時間の状況」の把握義務等 適切に把握できていない事業場への対応等
裁量労働制 専門業務型・企画業務型(令和6年改正) 濫用防止措置を前提とした対象の在り方
4. 実務対応の流れ
① 労働時間の記録方法を点検する
・タイムカード・勤怠システムなど客観的な方法で記録できているか確認
・自己申告の場合は、実態との乖離がないか定期的に確認
② 休息時間の実態を把握する
・終業から翌日の始業までの間隔が短い社員・部署を洗い出す
・交替制や繁忙期の勤務パターンも確認
③ 時間外の連絡ルールを考える
・夜間・休日のメール、チャットの扱いを社内で話し合う
・緊急時の連絡方法と担当者を決めておく
④ 裁量労働制を使っている会社は運用を再確認
・専門業務型は労使協定、企画業務型は労使委員会の決議が必要。令和6年改正後の本人同意(専門業務型も対象)や同意撤回の手続が整っているか確認
・健康・福祉確保措置が実際に行われているか確認
5. まとめ
・勤務間インターバル等は「法的位置付け」を含めて審議中で、改正の有無・内容・時期は未定
・裁量労働制は対象の在り方が検討されているが、拡大が決まったわけではなく、労使の意見は対立
・労働時間の適正な把握は、改正を待たず現行法令で求められている対応
法改正を待たずに、勤怠管理と休息の実態を点検しておくことが、最も確実な備えです。
筆者紹介
東京丸の内社会保険労務士法人
全国対応・助成金特化の社労士事務所として、年間多数の申請支援を行っています。
はじめての助成金も、制度の選び方から丁寧にサポート中。
このブログでは「中小企業の味方」として、現場目線のリアルな情報をお届けしています。
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【出典】
厚生労働省「第212回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」(令和8年10月14日)
厚生労働省「第213回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」(令和8年10月23日)



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